愛猫がくしゃみをしたり、よだれを垂らしたり、「なんだか口を痛そうにしている…」といった症状が見られると、飼い主さんはとても心配になりますよね。
「ただの猫風邪だと思っていたら、口内炎ができていた」 「『猫カリシウイルス感染症』という言葉を聞いたけど、うちの子もそうかも？」
猫カリシウイルス感染症は、いわゆる「猫風邪」の主な原因の一つですが、特に口の中に厄介な症状を引き起こすことがあるため、正しい知識を持っておくことが大切です。
この記事では、にゃんトピの頼れるナビゲーター「猫実（ねこざね）先生」の解説を交えながら、猫カリシウイルス感染症の具体的な症状、猫同士でうつるのかという感染経路、そして治療法やワクチンの重要性について、詳しく解説していきます。
この記事を読めば、愛猫のサインを見逃さず、適切な対応をとるための知識が身につきます。
まず、猫カリシウイルスとは、多くの飼い主さんが「猫風邪」と呼ぶ「猫の上部気道感染症」を引き起こす、主要なウイルスのひとつです。
感染すると、くしゃみ、鼻水、発熱など、人間の風邪によく似た症状が出ます。
「猫風邪」の原因としては、「猫カリシウイルス」の他に、もうひとつ「猫ヘルペスウイルス」というものがよく知られています。
どちらもくしゃみや鼻水といった症状は共通していますが、一般的に以下のような症状の違いがあると言われています。
- 猫ヘルペスウイルス: 結膜炎や角膜炎など、「目」の症状が強く出やすい傾向。
- 猫カリシウイルス: 口内炎や舌の潰瘍など、「口」の症状が出やすい傾向。
もちろん、これはあくまで傾向であり、どちらのウイルスに感染しているかを症状だけで見分けるのは非常に困難です。
この猫カリシウイルスが厄介と言われる理由の一つに、「非常に変異しやすい」というウイルスの性質があります。
変異しやすいため、感染しても無症状の猫もいれば、重い口内炎に悩まされる猫もいるなど、症状の出方に大きな幅があります。
また、後述するワクチンを接種していても、変異したウイルスには感染してしまう可能性（ただし、重症化は防げる可能性が高い）があることも、このウイルスの特徴です。
「猫カリシウイルスに感染すると、具体的にはどのような症状が出るのでしょうか。また、他の猫に『うつる』のかも気になります。猫実先生に詳しく聞いてみましょう」
猫カリシウイルスは、症状の幅が広いのが特徴です。初期サインを見逃さないことが大切ですね。感染経路についても、多頭飼育のお家では特に注意が必要です
「主に以下のような症状が知られています」
- くしゃみ、鼻水、発熱（猫風邪症状）
いわゆる「猫風邪」の症状です。元気や食欲がなくなることもあります。 - 特徴：口内炎、舌の潰瘍（口を痛がる、よだれが増える）
カリシウイルスの代表的な症状と言われます。
「ごはんを食べたそうにするけど、痛くて食べられない」「よだれがやたらと増えた」「口をくちゃくちゃさせる」といった行動が見られたら、口の中をチェックしてみてください。 - まれに起こる重篤な症状（跛行、強毒全身性カリシウイルス）
まれですが、子猫が一時的に足を引きずる「跛行（はこう）」という症状が出ることがあります。
さらに稀ですが、非常に致死率の高い「強毒全身性猫カリシウイルス」というものも報告されています。
まず知っておいていただきたいのは、猫カリシウイルスは猫同士で非常にうつりやすい、ということです
主な感染経路は、感染した猫の唾液や鼻水、目やになどに含まれるウイルスが、他の猫の口や鼻から入ること（接触感染・飛沫感染）です。
食器や飲み水を共有したり、お互いをグルーミング（毛づくろい）し合ったりすることで、同居猫にうつる可能性は非常に高いと言われています。
なるほど・・・上記を見る限り、多頭飼育の場合1匹が猫カリシウイルスに感染したら、かなりきちんとした隔離をしないと他の猫にうつさないようにするのは難しいですね。
飼い主さん自身への感染を心配される方もいますが、安心してください。 猫カリシウイルスは猫特有のウイルスであり、基本的に人間にうつることはありません。
ご家族にうつる心配はせず、愛猫のケアに専念してあげてくださいね
もし愛猫がカリシウイルスに感染してしまったら、どのような治療が行われるのでしょうか。また、治るまでにどれくらいの回復期間がかかるのか調べてみましょう。
カリシウイルスそのものを直接攻撃する『特効薬』は、残念ながらないのです。そのため、治療は猫自身の免疫力がウイルスに勝てるよう、症状を和らげる『対症療法』が中心となります
- ウイルスへの特効薬はない？「対症療法」がメイン
猫が持っている免疫力でウイルスを抑え込むのをサポートするのが治療の基本です。 - 抗生物質（二次感染予防）、インターフェロン、消炎剤
ウイルス感染で弱った体に他の細菌が感染する「二次感染」を防ぐために、抗生物質が処方されることがあります。
また、ウイルスの増殖を抑える目的でインターフェロン注射が使われることや、口内炎の痛みを和らげるために消炎剤（痛み止め）が使われることもあります。 - 口内炎がひどい場合のケア（痛み止め、栄養補給）
痛みが強くてごはんが食べられない場合は、点滴による水分・栄養補給や、食欲増進剤などが使われることもあります。
体力のある猫が急性の症状（くしゃみ、鼻水、発熱など）を示した場合、適切な治療とケアによって、回復期間は通常1～2週間程度で症状が改善することが多いと言われています。
ただし、体力のない子猫や老猫、他の病気を持っている猫の場合、症状が長引いたり、治りにくくなったりするケースもあります。
カリシウイルスを理解する上で、もう一つ重要な点があります。それは『キャリア』の問題です
- 症状がすっかり治まったように見えても、体内にウイルスが残り続け、唾液や鼻水などにウイルスを排出し続ける猫がいます。これを「キャリア」と呼びます。
- キャリアの猫は、他の猫への感染源となる可能性があります。
- また、カリシウイルスがきっかけとなって、回復期間後もずっと口内炎が続く「慢性歯肉口内炎」という厄介な病気に移行する可能性も指摘されています。
カリシウイルスは、一度感染すると慢性化したり、キャリアになったりする可能性があるため、何よりも『予防』が大切です。 その最も重要な予防策が『ワクチン接種』です
猫カリシウイルスは、ほとんどの猫ちゃんが接種する「3種混合ワクチン」や「5種混合ワクチン」といった、コアワクチンに含まれています。
ここでよく誤解されがちなのですが、カリシウイルスのワクチンは、「100%感染を防ぐ」というものではありません。変異したウイルスに感染してしまうことはあります。
ワクチンの最大の目的は、もし感染してしまった場合でも、症状を軽く済ませたり、重篤な症状になるのを防いだりする「重症化予防」にあるのです。
ワクチン接種とあわせて、日々の生活環境を整えることも大切です
猫の免疫力を低下させる「ストレス」は大敵です。トイレを清潔に保ち、新鮮な水が飲め、安心して休める環境を整えてあげてください。
もし新しく猫を迎える場合は、先住猫と接触させる前に、可能であれば一定期間（2～3週間）は部屋を分け、健康状態をチェックするのが理想的ですね。
猫実先生の解説、本当に勉強になりました！ 『重症化を防ぐ』ためのワクチン、そしてうつる・うつらないの話…。 わが家はしょうすけとゆうまの多頭飼育なので、感染症には特に気を使っています（…いや、使おうと改めて思いました！ゴホゴホ…）
他のご家庭も同じかと思いますが、わが家のしょうすけとゆうまも、毎年同じ時期にワクチンを接種しています。
正直、「完全室内飼いだし、家猫なのでそんなに必要かな？」と思う節が、まったくなくはないです。 でも、猫実先生のお話にあったように「重症化を防ぐ」という目的や、何よりも「もしも」の時に「あの時ワクチンを打っていれば…」と後悔しないための、飼い主の「安心感」はすごく高いんですよね。
まさに、パパちゃん・ママちゃんにとっての『お守り』です。
幸い、わが家ではしょうちゃんもゆうまさんも、まだ口内炎でごはんが食べられない、という深刻なトラブルは経験がないんです。（ゆうまさんがカリカリをポロッと落とすことはありますが、それはドンくさいだけみたいで…笑）
でも、もしその時が来たら…ごはんが大好きな二人が食べられなくなったら、飼い主として一番つらい。 そこで、「どういう工夫ができるか」を調べてみました！
やはり基本ですね。カリカリ（ドライフード）が痛みで食べられない時は、柔らかいウェットフードが良さそうです。
猫は匂いで食欲が増すと言います。ウェットフードを電子レンジなどでほんのり人肌に温めて、匂いを立たせてあげると食欲が刺激されるようです。
いつものカリカリを、ぬるま湯や猫用のスープでふやかして、柔らかくしてあげるのも手ですね。
少しの量でもしっかり栄養が摂れる、高カロリーな治療用の（または回復期用の）療法食を獣医師さんに相談するのも大事だと思いました。
（…うっ、これは耳が痛いんですが） 猫実先生のお話を聞いて、わが家の現状を正直に告白します。
ウチは給餌器・システムトイレは一応（しょうすけ用・ゆうま用で）分けてはいるんです。 でも、ゆうまさんは必ず自分の方で食事もトイレもするのに、兄貴分のしょうすけはゆうまのお皿のごはんまで横取りしがち（笑）
トイレについては、なぜか2匹とも「1つはおしっこ用」、「一つはうんち用」みたいなルールで使っている感じです…。
先生の話を聞いて、感染症については有効な対策が出来ているとはいいがたい状況ですので、もしどっちかが体調を崩したら、しっかり隔離できるように、少し真剣に対策を考えてみようかな、と思いました（汗）
（もぐもぐ…）口が痛いのはイヤだなぁ…ごはん美味しく食べたい…
本当にそれ！ゆうまさんもしょうちゃんも、ごはん大好きだもんな。 二人の『食べ方』がおかしい時や、よだれが増えた時は、すぐに口の中をチェックしないとね。 ワクチンと、日々の『あれ？』っていう観察が大事だって、改めて意識したよ！
その通りです、パパちゃん。『あれ？』という小さな変化に気づけることこそ、飼い主さんと猫ちゃんの絆の証ですよ。 カリシウイルスは症状が多様で厄介な面もありますが、正しい知識を持って、ワクチンでしっかり『重症化』に備えることが、猫ちゃんとの長い暮らしを守ることに繋がります。
何か気になるサインがあれば、一人で悩まず、早めに獣医師さんに相談してくださいね
