「猫は腎臓病になりやすい」 猫と暮らす方なら、一度は耳にしたことがある言葉ではないでしょうか。
実際、高齢猫の死因トップクラスであるこの病気「慢性腎不全」。 「治らないって本当?」 「若いうちからできることはないの?」 と、不安を感じている飼い主さんも多いはずです。

こんにちは、にゃんトピのパパちゃんです。 わが家のアメショ「しょうすけ」とエキゾ「ゆうま」はまだ若いですが、猫の宿命とも言える腎臓病には、常に危機感を持っています。
子供の頃に実家にいた猫も最後は腎臓病、最近でも会社のメンバーの猫が高齢で腎臓病。 それくらい、この病気は猫飼いにとって身近で、乗り越えたい「ラスボス」のような存在だと思っています。
今回は、にゃんトピの頼れるアドバイザー・猫実先生に、腎臓病のメカニズムや、今話題の「AIM」についても簡単に解説してもらいます。
※AIMについてはこちらのページで更に詳しく解説します
正しい知識と早期発見のポイントを知り、愛猫の健康寿命を一日でも長く延ばすための準備を始めましょう!

猫といえば腎臓病というイメージがありますが、そもそも『腎臓』って、おしっこを作る以外にどんな仕事をしているんですか? 『沈黙の臓器』なんて呼ばれていて、なんだか怖いイメージがあるんですが…。

パパちゃん、こんにちは。いい質問です。敵を知るには、まずその働きを知ることが大切ですよ。

腎臓の主な仕事は、血液中の老廃物をろ過して、おしっことして体外に捨てることです。 コーヒーのフィルターをイメージしてください。必要な水分や栄養素は体に戻し、いらないゴミだけを捨てる『再吸収とろ過』を行っています。

それだけではありません。
- 血圧のコントロール
- 造血ホルモンの分泌(血液を作る命令)
こんな重要な役割も担っています。だから腎臓が悪くなると、高血圧になったり、貧血になったりもするんですよ。

腎臓の中には『ネフロン』という、ろ過を行う小さな工場がたくさんあります。 このネフロン、実は一度壊れると二度と再生しない消耗品なんです。
加齢とともにネフロンが少しずつ壊れて減っていき、残ったネフロンが無理をして働き、また壊れ…。 こうして機能する工場が減っていくのが『慢性腎不全(慢性腎臓病)』です。 全体の70%以上が壊れるまで症状が出にくいので、気づいた時にはかなり進行していることが多く、まさに『沈黙の臓器』なのです。

加齢が最大の原因ですが、遺伝的なリスクもあります。 特にペルシャ系(パパちゃんちのゆうまくんのようなエキゾチックショートヘアも含む)は、『多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)』という遺伝性の腎臓病にかかりやすいと言われています。 若い頃から定期的なチェックが必要ですね。


沈黙の臓器…。私たちが早く気づいてあげるには、どこを見ればいいんですか?

一番分かりやすいサインは、『多飲多尿(たいんたにょう)』です。
- 水を飲む量が急に増えた
- おしっこの量が増えた
- おしっこの色が薄くて臭いがしない
これらは『水をよく飲んで健康!』ではなく、『腎機能が落ちて、薄いオシッコしか作れなくなったから、脱水を防ぐために必死で水を飲んでいる』状態の可能性が高いです。 このサインを見逃さないことが、早期発見の分かれ道です。

症状が出にくいなら、定期的に病院でチェックしてもらうしかないわね。 具体的に、どんな検査をすれば腎臓の状態が分かるんですか?

基本は血液検査です。以下の数値を確認します。
- クレアチニン(Cre): 腎機能が低下すると数値が上がりますが、かなり悪くならないと反応しないことがあります。
- BUN(尿素窒素): 腎臓で排泄される毒素の量を見ます。
- SDMA(エスディーエムエー): ここが重要です! クレアチニンよりも早期(腎機能が40%ほど失われた段階)で異常を検知できる新しい検査項目です。

最近の健康診断では『SDMA』が含まれていることが多いですが、もしなければオプションで追加することをおすすめします。

血液検査だけでなく、尿検査も非常に大切です。 『尿比重(にょうひじゅう)』といって、おしっこの濃さを調べることで、腎臓の濃縮機能が落ちていないかをいち早く知ることができます。 また、パパちゃんちのゆうまくんのような品種(エキゾチックなど)は、エコー検査(超音波)で腎臓の形や嚢胞(のうほう)がないかを見てもらうことも重要ですよ。

もし診断されたら、完治はするんでしょうか?治療費も気になります…。

残念ながら、一度壊れてしまった腎臓の組織を元に戻すことは、現代の獣医療ではできません。 治療の目的は『完治』ではなく、『残っている腎機能を守り、進行を遅らせて、猫ちゃんが楽に過ごせる時間を延ばすこと』になります。

そうなんですね…。と、いう事は腎臓病は①発症を遅らせるケアを怠らない!→②発症したら進行を遅らせる!これが大事なんですね。

病気の進行度(ステージ)に合わせて、治療法が変わります。
- 初期: 腎臓療法食(タンパク質やリンを制限したフード)への切り替え、サプリメント(リン吸着剤など)。
- 中期以降: 脱水を防ぐための『皮下点滴』や、吐き気止め、血圧を下げる薬などの投薬。
特に療法食は、寿命を延ばす効果が高いと言われています。

費用は病状によりますが、目安としては以下の通りです。
- 療法食: 月数千円〜(普通のフードより高価です)
- 定期検査: 数ヶ月に1回、数千円〜1万円程度
- 皮下点滴(通院): 週数回〜毎日必要になると、月数万円かかることも。
長期戦になる病気なので、ペット保険などで備えておくことも大切ですね。

最近研究が進んでいる『AIM(エーアイエム)』について教えてください!腎臓病が治る薬ができるって聞いたんですが!

AIMは、宮崎徹先生が発見した血液中のタンパク質の一種です。 通常、腎臓にゴミ(死んだ細胞など)が詰まると、AIMがやってきて掃除をしてくれます。 しかし、猫のAIMは先天的に働きにくい構造になっていることが分かりました。だから猫は腎臓にゴミが溜まりやすく、腎臓病になりやすいのです。


現在市販されている『AIM入りフード』は、体内のAIMを活性化させる成分(アミノ酸など)を配合したもので、あくまで『健康維持をサポートする食品』です。 腎臓病そのものを治す『治療薬』としてのAIM製剤は、現在も鋭意開発・治験中です。 夢の治療薬として期待されていますが、現段階では『フードで日頃のケアをサポートする』という認識が良いでしょう。
※AIMについては上記の記事で更に詳しい情報を公開しています。

AIMの詳細も大変気になりますが、それ以外に、日々の生活で僕たちが気をつけるべき『基本の予防策』はありますか?

もちろんです。AIMはあくまでサポート。基本となるのは『水・食事・口内環境』の3つです。

腎臓にとって一番の負担は『脱水』です。 猫ちゃんは元々水をあまり飲まない動物なので、飼い主さんが工夫して飲ませてあげる必要があります。

- 水飲み場を複数箇所に増やす
- 流水タイプ(給水機)を使う
- ウェットフードを取り入れて食事から水分を摂る
『飲みたい時にすぐ飲める』環境を作ってあげましょう。」

塩分(ナトリウム)の摂りすぎは腎臓に負担をかけます。人間の食べ物は絶対NGです。 また、肥満も腎臓病のリスクを高める要因になります。 おやつをあげすぎず、適正体重を維持することが、将来の腎臓を守ることにつながりますよ。


意外かもしれませんが、口内環境と腎臓は密接に関係しています。 歯周病菌が血管に入り込み、腎臓に炎症を起こすことがあると言われています。 毎日の歯磨きや、歯磨き効果のあるおやつなどで、お口の中を清潔に保つことも立派な腎臓ケアなんですよ。

猫の宿命である腎臓病。 まだ健康なわが家ですが、パパちゃん・ママちゃんなりに対策(というか悪あがき?)をしています。
実は数年前、まだAIM研究が東京大学内で行われていた頃。 現「一般社団法人AIM医学研究所」代表理事でAIM研究の第一人者・宮崎徹先生が、東京大学内で教授として猫の腎臓病治療薬研究を行っていたニュースを見ました。
「これが完成すれば、世界中の猫ちゃんの寿命が伸びるかもしれない!・・・つか、うちの子達と30年くらい過ごせたりして!!???」
そう思い、猫飼いとして研究の成功を切願する気持ちで、東大基金を通じて本当にわずかな金額ですが寄付をさせていただきました。 その後、フードとして製品化され、治療薬の市場提供も間近と聞いて、勝手に親戚のような気持ちで大変嬉しく思っています。

そんな経緯もあり、わが家では現在、いつものフードに「AIM配合フード」500gを月1袋程度混ぜて与えています。

正直、AIMフードってちょっとお高いですし(苦笑)。 あと、しょうすけもゆうまも、フードを急に全部変えると『これじゃない』って食欲が落ちちゃうんです。 だから混ぜてあげてるんですが…これって薄まって意味あるのかな?お守り代わりかな?

ふふ、パパちゃんの気持ち分かりますよ。 食べないよりは良いですが、あくまで補助的なものと考えましょう。 何より大切なのは、『食べてくれること』と『水分をとること』です。 ベースのフードの栄養バランスを崩さない程度に、トッピング感覚で続けるのは良い習慣だと思いますよ。
腎臓ケアの基本は、やっぱり「水」です。 わが家では、循環式給水機の定番「ピュアクリスタル」を愛用中。 流れる水が好きなのか、2匹ともたまに心配になるくらいゴクゴク飲んでいます(笑)。
今は猫のお食事部屋に1箇所だけですが、猫たちがよくたむろしている僕の仕事部屋にも、もう一台設置しようか検討中です。 「飲みたい時にすぐ飲める」環境づくりが、一番の腎活かもしれませんね。

お水おいしい!ゴクゴク……ぷはーっ! って、パパちゃん。お水飲みすぎもダメなの?どっちなの?

ぼく、おやつならサプリでもなんでも食べるよ…。 あ、でもカリカリはいつもの味が一番好きかな(モグモグ)。

ふふ、二人とも元気でよろしい。 AIMのお薬、早く実用化されるといいわね。それまでは私たちができるケア(食事・水・観察)を頑張りましょう。

そうだね。死因No.1の怖い病気だけど、早期発見できれば長く一緒にいられる。 今日からトイレ掃除の時は、おしっこの量と色チェックを厳しくいくぞ!

頼もしいですね。 腎臓病は、飼い主さんと猫ちゃんの二人三脚の戦いです。 『多飲多尿』のサインを見逃さず、知識と愛情で、穏やかな時間を守ってあげてくださいね。

